「昔は一晩寝れば疲れが取れたのに、今は何日休んでも体が重い」
「記憶力が落ちてきて、夜もぐっすり眠れない」
「更年期の不安で夜中にドキドキして眠れない」
最近、こんな経験はありませんか？
上記のような症状があっても、多くの人は「年を取れば仕方ない」と思って、あきらめてしまいがちです。しかし、実はそうではありません。近年は老化そのものを「病気」と捉え、進行を遅らせる方法が世界中で研究されています。
本記事では、その中でも今もっとも注目されている成分「NMN」について、働きや摂取方法などをくわしく解説します。
人間はなぜ老いるのか？
私たちは誰しも、年齢を重ねるにつれて体力の低下や肌の変化など、さまざまな「老化」を感じるようになります。
では、そもそも人はなぜ老いるのでしょうか。その理由は大きく分けて3つあります。
長寿遺伝子「サーチュイン」の機能低下
私たちの体には、「サーチュイン」と呼ばれる遺伝子があります。これは「長寿遺伝子」とも呼ばれ、細胞の修理工のような働きをしています。サーチュインは、DNAの損傷を修復したり、ストレスから細胞を守ったりするほか、エネルギーを生み出す「ミトコンドリア」を管理する役割も担っています。サーチュインがしっかり働いていると、細胞は若々しさを保つことができます。一方、年齢とともに働きが弱まると、細胞に傷が増え、老化が進んでしまうのです。
活性酸素の増加
活性酸素の増加も、老化を進める原因のひとつです。体の中では、毎日エネルギーを作り出す過程で活性酸素が発生します。少量の活性酸素は免疫を助ける働きをしますが、増えすぎると細胞を傷つけ、炎症を引き起こして老化を加速させてしまうのです。
ホルモンの減少
若いころは十分に分泌されていた成長ホルモンや性ホルモン、メラトニンなどは、年齢とともに減少していきます。これらのホルモンは、体のバランスを整える「指揮者」のような存在です。分泌量が減ると筋肉が衰え、骨が弱くなり、免疫力も低下します。さらに、更年期症状が強くあらわれることもあります。
「老化の時計」は遅らせられるのか？
「老化を止めることはできないのか？」
この問いに、科学者たちは長年挑み続けてきました。かつては、ブドウの皮から抽出される「レスベラトロール」という成分が注目されましたが、期待されたほどの効果は確認されませんでした。そんな中、2000年代に入ると、ハーバード大学医学部のデビッド・シンクレア教授が「NMN」という成分を発表します。このNMNは、サーチュイン遺伝子を再び活性化させ、老化のスピードを遅らせる可能性を示しました。その後、アマゾンのジェフ・ベゾスやグーグルのラリー・ペイジ、そしてブライアン・ジョンソンといった世界的な富豪たちが、NMN研究に巨額の投資を行っています。
理由はいたってシンプル。NMNには若さを取り戻し、健康寿命を延ばす可能性があるからです。
NMNの働きとは？
NMNを理解するには、まず「NAD⁺」という物質を知る必要があります。
NAD⁺は細胞の中でバッテリーのような役割を果たしています。
主な働きとして、以下のようなものが挙げられます。
▪︎ ミトコンドリアを動かしてエネルギーを作る
▪︎ DNAの損傷を修復する
▪︎ 炎症を抑える
▪︎ サーチュイン遺伝子を働かせる
一方、NAD⁺は20代半ばから減り始め、40代ではその量が半分以下になるといわれています。その結果、細胞の修復力が低下し、老化が加速してしまうのです。
NMNは、NAD⁺を作り出すための「もと」となる物質です。NMNを摂取すると体内のNAD⁺が増え、眠っていたサーチュインが再び活性化します。サーチュインが働き始めると、エネルギー代謝が向上するだけでなく、活性酸素を除去したり、ホルモンのバランスを整えたりする効果も期待できます。
つまり、NMNは細胞レベルから体全体の若返りをサポートしてくれる成分なのです。
研究で確認されたNMNの効果
では、実際の研究結果をいくつか見てみましょう。
まず、2021年に行われた研究では、45～60歳の健康な成人に90日間NMNを与えたところ、「細胞の時計」と呼ばれるテロメアが伸びることが確認されました。テロメアは短くなるほど老化が進むといわれています。それが伸びたということは、老化のスピードが遅くなったことを意味します。
次に、2022年の研究です。中年の被験者80人に60日間NMNを摂取させた結果、体内時計の進み具合が実際に遅れることが確認されました。
さらに、糖尿病予備群の女性にNMNを与えると、血糖をコントロールするインスリン感受性が25％改善したという報告もあります。これは疲れにくくなるだけでなく、糖尿病リスクを下げる可能性を示しています。
また、女性にとって特に興味深い研究もあります。老齢のマウスにNMNを与えたところ、卵子の質が改善し、排卵率や出産率が上昇したのです。更年期で悩む女性にとって希望の持てる結果といえるでしょう。
さらに、記憶力に関する研究では、老齢マウスにNMNを与えることで記憶障害が改善し、脳のミトコンドリア機能が向上したという報告がなされました。中年以降に感じやすい物忘れや集中力の低下に関わる、重要な発見といえます。
さらに、アルツハイマー型認知症のモデルマウスにNMNを投与したところ、原因物質であるベータアミロイドの蓄積が減少し、脳の炎症が抑えられたという研究もあります。つまり、NMNには認知症予防の可能性までも期待されているのです。
もちろん、まだ人間を対象にした大規模な臨床研究は十分に行われていません。しかし、「NMNを摂取するとNAD⁺が増える」という事実は、すでに多くの研究で確かめられています。
食事からNMNは摂取できる？
ブロッコリーやキャベツ、アボカド、エンドウ豆などの食品にはNMNが含まれています。ただし、その量はごくわずかです。
たとえば、ブロッコリーからNMNを100mg摂取しようとすると、1日に約14kgも食べなければなりません。そのため、NMNを効率よく取り入れるには、サプリメントで摂取する方法が効果的といえます。
NMNサプリの選び方と服用ガイド
NMNのサプリメントはどのように選べばいいのでしょうか。
まず大切なのは、NMN単体だけの製品ではなく、ビタミンB群・ビタミンC・ビタミンD・ビタミンK2、さらにマグネシウムや亜鉛、セレンといった必須ミネラルが一緒に配合されているものを選ぶことです。なぜなら、NMNは単独で摂るよりも、これらの補助栄養素と組み合わせることで体に吸収されやすくなり、体内でより効率的に働くからです。つまり、サプリメントを選ぶときは「NMN＋栄養バランス」を意識することが大切といえます。
次に、摂取量についてです。研究では、1日100mg以下から始めるのが安全とされています。少量のNMNでもNAD⁺を増やす効果が確認されているため、まずは少ない量から始めて、体の様子を見ながら続けてみることをおすすめします。
副作用についても触れておきます。基本的にNMNの安全性は高いものの、人によっては顔のほてり・頭痛・吐き気といった症状が現れることがあります。体に合わないと感じたときは、摂取量を減らす、しばらく摂取を中止するなどの調整を行ってください。
そして最後に、毎日同じ時間に飲むことを心がけましょう。たとえば朝食後や昼食後など、決まったタイミングで摂取すると、体のリズムが整って続けやすくなります。
「正しい選び方」と「正しい使い方」を守ることで、より効果を実感しやすく、安全に続けることができるのです。
NMN以外でNAD⁺を増やす方法
NAD⁺を増やすためには、NMNだけに頼るのではなく、生活習慣を整えることも大切です。
まずはオートファジーダイエット。1日24時間のうち16～18時間を空腹で過ごす食事法です。空腹の時間が続くと、細胞は壊れたタンパク質を分解・再利用し、体の中を掃除し始めます。この過程でNAD⁺が増え、サーチュインが活性化。活性酸素の除去やホルモンバランスの調整につながります。
次は、炭水化物を減らし、良質なタンパク質と脂質を中心に摂るケトジェニック食です。この食事法には、インスリン抵抗性を改善し、ミトコンドリアを元気にする効果があります。その結果、NAD⁺の増加も期待できます。
3つ目は運動。特に「Zone2」と呼ばれる有酸素運動が効果的とされています。息は上がるけれど会話はできる程度の強度、たとえば軽いジョギング、自転車、水泳などがおすすめです。週に3回以上、1回30分ほど行うだけでもNAD⁺が増え、細胞の老化を遅らせることができます。
最後に、食品からのNMN摂取も意識しましょう。ブロッコリー、アボカド、エンドウ豆、キャベツなど、NMNを含む食材を日常的に取り入れることが大切です。
つまり、NMNサプリに加えて生活習慣を整えることで、その効果を何倍にも高めることができるといえるでしょう。
まとめ
40代以降になると、疲れやすさ・記憶力の低下・更年期の不安・体力の衰えなどを感じる人が増えてきます。これは単に年齢のせいだけではなく、その背景にはNAD⁺の減少が関係している可能性があります。
NMNには、NAD⁺を増やし、サーチュイン遺伝子を再び活性化させる働きがあります。その結果、細胞に蓄積された活性酸素を除去し、乱れたホルモンバランスを整えて、体全体の活力を取り戻すサポートをしてくれます。
これにより、単に「疲れにくくなる」というだけでなく、10年後も若さと健康を維持するための土台をつくることができます。
日頃からNMNの存在を意識することで、毎日をより元気に、そして自信をもって過ごせるようになるでしょう。
